重要なスパッタリング材料であり、その優れた磁気エネルギー、良好な導電熱伝導性及び低いコストのため、磁気記憶、電子デバイスなど工業の分野に広く応用されている。

１．特性

　１）優れた磁気エネルギー

・強磁性：鉄は典型的な強磁性材料であり、Curie温度（770°C）、磁性薄膜の製造に適している。

・高密度磁気記録媒体に使用できる高飽和磁化（〜2.2 T）。

　２）良好な導電性と熱伝導性

・電気伝導率：約1.0×10×S/mで、電磁シールドと導電性薄膜に適している。

・熱伝導率：スパッタリング中の放熱を助ける約80 W／（m・K）。

　３）高い融点と機械的強度

・融点：1538°C、中高温スパッタリング技術に適している。

・硬度が高く（HV≒80−120）、耐摩耗性が良く、工具コーテイングに適している。

　４）化学的安定性と制御可能性

・純鉄は湿潤環境で酸化しやすいが、Fe−Ni、Fe−Coなどの合金化または表面不動態化により耐食性を高めることができる。

・電磁特性を調整するために、Si、Alなどの他の元素と混合することができる。

２．主な用途

　１）磁気記憶とセンサ

・ハードディスクドライブ（HDD）：磁気記録媒体の薄膜堆積用。

・磁気センサ：自動車の電子、工業検査用のホールセンサ、磁気抵抗センサなど。

・磁気ランダムメモリ（MRAM）：強磁性層材料として。

　２）電子・半導体業界

・電磁遮蔽層：携帯電話、パソコンなどの電子機器用の耐干渉コーティング。

・インダクタンスとトランスフィルム：高周波デバイスの性能を向上させる。

　３）工業用コーティングと工具コーティング

・耐摩耗コーティング：工具、金型の使用寿命を延ばすために表面にコーテイングする。

・防食めっき層：合金化（例えばFe−Cr）により耐食性を高め、船舶、化学プラントに使用する。

　４）新エネルギーと触媒分野

・リチウムイオン電池電極材料：リン酸鉄リチウム（LiFePO₄）薄膜形成。

・触媒担体：燃料電池、化学工業触媒反応用。